白井 旬 の戦略人事ブログ

CSV・ESGとは? SDGsは謎の用語多すぎます(日経Bizgateー2022/10/13記事) 

当・職場のSDGs研究所・代表の白井旬が、日経Bizgateの連載【サバイバル経営Q&A】に寄せた記事を転載いたしております。

CSV・ESGとは? SDGsは謎の用語多すぎます

サバイバル経営Q&A 白井旬・職場のSDGs研究所代表(2022/10/13)

 
SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。先んじて対応できればよいが、時には対応が難しく右往左往することも。あなたの職場は持続可能ですか。変化の時代にビジネスパーソンが直面する悩みや疑問に専門家が答えます。第2回はSDGsの関連用語が多すぎて困惑する経営者に、職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が考え方を伝授します。

Q:

会社としてSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みを始めようと情報収集を始めました。ところが「CSV」「ESG」など、似たような専門用語がいくつもあり、意味の違いがよくわからず一歩目を踏み出せません。経営者として何から手を付ければよいでしょうか。

 
A:

まるで4年前の私のようです。SDGsには一目でわかるような明快な基準や正解があるわけではない上、アルファベットの似たような専門用語が多くあります。理解ができていないと、取り組みに不安を感じるのはもっともなことだと思います。私が登壇するセミナーでは、CSVやESGといった用語の説明を始めると、参加者のみなさんが一斉にメモを取り出します。不安があるからでしょう。でも、説明を進めていくと、いつも参加者から安堵感のような反応が返ってきます。それはSDGs関連の用語には「持続可能性」という共通点があること、そして「三方よし」など日本型経営の考え方と親和性が高いことを伝えた場面です。
 

それでは、用語を説明していきましょう。

CSV=「共有価値の創造」 近江商人の「三方よし」と共通点

CSVはCreating Shared Valueの略で「共有価値の創造」という意味で、近年よく耳にする「両利きの経営」のベースにもなる考え方です。これまで企業活動では経済的利益や短期的な事業目標が優先され、環境破壊や人々の間の格差拡大を招くことが少なくありませんでした。それに対し、企業がその事業で社会課題を解決して社会的価値を生み出せれば、経済的価値(企業利益)と両立できるとする考え方がCSVです。近江商人が大切にしてきた「三方よし」や、「日本資本主義の父」渋沢栄一が追求した経済と公益の両立(道徳経済合一説)に通じます。
 

沖縄県の食品卸、三大食品(沖縄県南城市)の取り組みは、CSVの意義がよくわかる事例です。4年前、同社は県内への観光客ラッシュに伴いホテルや居酒屋への食品配送件数が急増し、社員の長時間労働や配達車両の燃料費とCO2排出量の増大に直面しました。そこで決断したのは「ライバル企業との共同配送」。競合2社と県内を分担して共同配送することで、車の移動距離や労働時間の大幅圧縮に成功しました。
  

ライバルとの協力は、自社の利益に固執するとなかなかできない決断です。しかし、共通の利益という視点を持ち協力することで、CO2削減や長時間労働是正という「社会的価値」と、ガソリン代や残業代の節減という「経済的価値」が、無理なく両立できたのです。

 

ESGは経営の評価指標 環境・社会・統治をバランスよく

ESGはEnviroment(環境)、Social(社会)、Governance(統治)の略語で、3つの要素の進捗で企業経営を評価する指標として提唱されています。3要素にバランスよく配慮して経営を進めていくことが、企業の持続可能性や成長のカギになるという考え方です。
 

環境や社会という言葉だけとらえると、一企業には荷が重いと感じる人が多いかもしれません。そこでおすすめしたいのは、身近なところから発想することです。たとえば、マグロ漁船を多数保有する漁業会社臼福本店(宮城県気仙沼市)のESG施策の出発点は、子どもたちでした。
 

遠方の海で何十日も魚を追い続けるマグロ漁船では、乗組員は地元の家族や友人と連絡を取るのも簡単ではありません。今後もそのような状態では「息子や若者たちはこの世界に入ってこないのではないか」(臼井壯太朗社長)。不安を払うために決めたのが「人が集まる魅力ある漁船」、第一昭福丸の建造です。

 

同船は乗組員の安全性と快適さを徹底的に追求。最新のネット通信設備で世界のどこからでもテレビ会議が可能です。乗組員もSNSを活用したコミュニケーションやネット動画の視聴ができるようになり、乗船を希望する若者が増えました。リアルタイムの気象海象データの活用により燃費やCO2排出量の効率化も実現。一隻の船から漁業のESGが動き出しています。
 

SDGsは基本ソフト 関連用語は機能別のアプリ
 
いかがでしょう。専門用語を具体的な事例で紹介すると、あなたにも見えてきたのではないでしょうか。SDGsの対策を進めるということは、「持続可能性」を職場の前提(基本ソフト)と位置づけ、本業で身近な社会的課題を解決していくことです。そのためには社員一人ひとりも働き方や考え方を変えていくことが大切になってきます。
 
そして、SDGsに関連する様々な用語は「持続可能性」という基本ソフト上で、課題解決のために機能するアプリと考えればわかりやすいと思います。会社で解決する社会的課題を明確にするためには、CSVという概念が役立つ。環境・社会・統治という3要素をバランスよく考えるならESGといった具合です。
 
この2つ以外の用語も意味するところをしっかり理解した上で、職場での役どころを考えてみましょう。視点が変わり、思わぬ職場の課題が見えてくるかもしれません。身近な課題一つ一つに適切なアプリを用意することで、あなたの職場のSDGsは着実に進歩していくはずです。

 



 

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